2011.11/29更新

◆ 「琉球の赤」

       「経営労務ディレクター2010・7〜8月号」より
             〜カラーコンサルタント 成田イクコ著 〜


 
 今から15年以上前になるだろうか。沖縄県那覇市の商工会議所で開催された色彩セミナーの講師に呼ばれて出かけたことがあった。沖縄に足を踏み入れたのは、その時が最初であり、沖縄に関する知識は学校の教科書で習った程度の上辺の情報しか持ち合わせていなかった。いわゆる何も知らなかった、というか知ろうとしていない、平和ボケした日本人の一人だったのである。それ以降、現在に至るまで沖縄本島、離島を含め10回以上訪れている。沖縄の海と風に包まれた沖縄時間が好きな沖縄病にかかった一人かもしれない。

 沖縄に惹かれた人達の中には、島へ移住する人達もいる。しかし、旅行者の立場と違って実際にそこで生活するとなると、様相は異なるだろう。沖縄は血縁型共同体で成り立っている社会である。もし、そこで生活し、地域に溶け込みたいと思うならば、その土地で家族を築いていくことを考えた方がいいのかもしれない。こうした共同体社会のことは、私達が沖縄の人々の生活文化について考える際に無視できない要素の一つである。

 
冒頭で述べたセミナーでは、参加者達に簡単なアンケートを行った。その中で、住んでいる場所のイメージカラーについて尋ねたところ、赤色と答えた人達が多かったことが印象に残っている。なぜ赤色なのか、と聞くと、琉球の色だから、という答えが返ってきた。本土のいくつかの地域でも同様の質問を行っていたのだが、地方ならば、自然の緑の色をあげ、赤色はむしろふさわしくない色として登場することが多かった。

 しかし、琉球王朝を色でたとえるならば赤だろう。首里城の赤は、漆で朱塗りされている。本土の城を見慣れていると想像できない色でもある。ただ日本全体からみても、古代、赤の色が権力者に使われた場所は多い。赤色の素材である朱には呪力が備わっており、邪悪なものから身を守ることができると考えられており、それが一部、寺や神社の建物の中に残っている場所もある。だからといって、その地域に住んでいる人達が赤を地域色と捉えているケースは聞いたことがない。沖縄の人達の場合、赤に対する想いの背景には、今も息づく琉球民族としての意識が存在するといっていいだろう。

 気候や風土や歴史が異なる地域の人達が、ある土地に対してイメージする色が似通っている場合は、もしかしたら何らかの共通項がそこで見出せるのかもしれない。しかし、その思い浮かぶ色が全く異なる場合には、その色の背景にある文脈に、かなりの距離感があるといっていいだろう。

 本土の人達が沖縄のことに思いを巡らす場合、どうしても自分自身の日頃の価値観や常識の延長線上で考えてしまう。依拠する社会が同じ場合は、それで構わないのだが、背景の社会の文脈が異なる場合にそれを行うと、共感を得られないどころか意識の隔たりによる摩擦が生じてしまうだろう。

 かといって、その異なる文脈についての知識を得ることで理解はできたとしても、沖縄の素地から生じる感覚や思考までを同じにすることはなかなか難しいだろう。それを念頭において、それでも、琉球の赤の底に流れる沖縄の長い歴史や文化、そして現在の状況について考える努力は、同じ日本人として忘れたくないものである。

 

 

 


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